栄養学の罠
 「小さい頃からプロテインを採らせると、身長が伸びなくなる」
これ、よく聞くんですよね。(;´Д`)
私からしたら「ありえへんわ。。。ヽ(;´Д`)ノ 」ってもんなんですけどね。

まず、プロテインを採らせることを禁止する方々の言い分では「身長の低い間にプロテインを採らせて、筋肉量を増やすと骨の発育を阻害して身長が伸びなくなる」「腎臓を悪くする」と、いうことらしい。
これはどう考えても栄養学的にも生理学的にもあり得ない。
まず、プロテインは「補助食品」であって、薬品ではない。プロテインというぐらいだからタンパク質なんですよ。つまり、肉、魚、大豆といったものと同じなわけです。タンパク質は分解するとアミノ酸になる。生物由来のタンパク質は分解すると約60%の割合でBCAA(Branched Chain Amino Acid)になるわけです。( ̄ー ̄)ニヤリ
BCAAは許容しても、プロテインは許容できないとは?

しかも、素人考えなんだが「筋肉はタンパク質で、骨はカルシウム」という誤った知識がそうさせているとしか思えないんですわ。
骨の生理学的組成は、造骨細胞によりコラーゲンの網目構造物である骨梁を構築し、それにVit.D3を介在してカルシウムを吸着させることによって骨として形成するわけです。つまり、いくらカルシウムを採ろうが骨梁が出来ないことには骨は発育しないということです。骨梁はコラーゲンから出来てます。つまりタンパク質です。そのタンパク質の摂取制限をしているだけで、逆に伸びるはずの身長も短縮してしまう恐れがあるわけです。

「腎臓を悪くする」というのもプロテイン本体じゃなく、プロテインに含有される「クレアチン」が障害を起こす元であり、それさえ回避すれば問題ないわけです。
エネルギー源としてのタンパク質 
  最近はウチの患者さんでも小学生から高度で過負荷なトレーニングをやっている子もいるし、高校でもかなり長時間のハードトレーニングをやってるのが普通となってきました。
さて、ここで問題です。
その長時間トレーニングによって、人体内ではどのようにエネルギー産生が行われているでしょうか?
最初の1時間は糖分(グルコース・グリコーゲン)で動けます。解糖系→TCAサイクル→電子伝達系の流れです。それが枯渇するとどうなるか?
正解は脂肪をエネルギーとします。β酸化によりアセチルCoAを産生して、TCAサイクルから電子伝達系へと流れる仕組みですね。
それからが問題。大概のスポーツ選手って体脂肪率が10%近辺だと思われますが、生命維持のために使われる分の脂肪はエネルギーには出来ませんから、脂肪代謝にも限界がある。場合によっては選択されない場合もあるわけで、その場合は何をエネルギー源とするかが問題になるわけです。
最終手段のエネルギー源は前記のBCAAになるわけです。BCAAは、本来は人体の恒常性維持のため、血中にある程度の割合で分布してます。それをエネルギー源として尿素サイクルからTCAサイクル→電子伝達系という流れによってエネルギー産生するわけです。「腎臓を壊す」といわれている原因の1つがこの尿素サイクルだと思うのですが、現実には大したこと無いです。それよりもあとで書きますが後者の意味でしょうけど。
で、話をBCAAに戻しますと、前述の通りBCAAは恒常性維持のためにある物質なので、総量が減ると速やかに補給されます。どうやって補給するかが問題になるわけです
補給する方法はただ1つ。「筋繊維を崩壊させてBCAAを産生する」です。
つまり、筋肉を崩壊させると約60%はBCAAとして血中に放出されますので、それで不足分を補うわけです。そして、筋肉を崩壊させるにしても、エネルギーを最大使用している中枢側で崩壊させると効率よく主動筋にエネルギー供給が出来るということです。実は経験上、野球肘やテニス肘の最大の起因はこれだと思ってます。
で、運動前にBCAAを供給しておいて血中濃度を上げておけば、エネルギー産生用の筋崩壊は免れられるということで、筋肉痛が起きにくくなるというのがBCAAが重宝される理由です。
ただし、BCAAは吸収も代謝も早いので持続的な摂取を必要としますが、練習中の持続的摂取はかなり困難だと思われます。そこでウチでは練習前にプロテインを採らせるようにします。
練習前にプロテインを摂取させることにより、最初の一時間はプロテイン内の糖分も補給でき、更には一時間後にプロテインが腸管に達する際に前述したように約60%はBCAAとなるわけで、腸管から持続的にBCAAの供給を行います。それが故に持続的摂取は必要無くなります。